【導入】“あのCM、なんかヘン?”と感じたあなたへ
テレビやYouTubeで流れるCMを見ていて、「あれ?今の何か変だったかも…?」と思ったことはありませんか?
一瞬の映像や音の変化、色彩の切り替え、あるいはちょっとした違和感。それは、単なる気のせいかもしれませんし、もしかすると何か特別な演出が施されていたのかもしれません。
最近、そうした「違和感」を感じた人たちの間で話題になっているのが、「ポッキーのCMにはサブリミナル効果があるのでは?」というウワサです。
SNSの投稿やYouTubeのコメント欄では、「あの瞬間に何か映った気がする」「映像のテンポが急に変わってドキッとした」など、さまざまな感想が飛び交っており、都市伝説的な話題として盛り上がっています。
もちろん、それが事実かどうかは冷静に検証する必要がありますが、こうした話題が出ること自体、CMや広告の演出が視聴者の記憶に強く残る力を持っている証拠とも言えます。
この記事では、こうした話題を鵜呑みにせず、あくまで中立的な立場で、「サブリミナル効果ってそもそも何?」「本当に効果があるの?」といった疑問にお答えしながら、心理学的な視点や広告の演出手法などについても、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。
このテーマに興味を持った方が、CMを見る視点を少しだけ変えてみたり、メディアの仕組みに関心を持つきっかけになれば嬉しいです。
ポッキーCMにサブリミナル効果!? 疑惑のきっかけをたどる
このウワサの発端は、SNS上に投稿された「ポッキーのCM、なんか違和感ある気がする…」というごく短い一言でした。
しかし、その一言が瞬く間に注目を集め、「どこの場面?」「確かに何か変だった気がする」と多くの視聴者が反応。 そこから、該当するCMの該当シーンを繰り返し見たり、映像をスロー再生して確認するなどの“検証ごっこ”が自然と始まったのです。
中には、画面の切り替わりが不自然に速く感じたり、BGMに混ざるような微細な音の変化に注目した人もいました。 「背景にうっすら何かの文字がある気がする」「キャラクターの動きが一瞬だけ不自然だった」といった意見もあり、それぞれの視点で気になる部分が指摘されていきました。
さらに、過去に放送された別バージョンのポッキーCMにも似たような“違和感”があったという声が出てきて、複数の映像が検証対象として比較されるなど、SNS上でちょっとしたブームのような広がりを見せたのです。
とはいえ、こうした声のほとんどはあくまで視聴者それぞれの主観的な印象に基づくものであり、現時点でサブリミナル効果を意図した制作であると裏づける客観的な証拠は確認されていません。
制作側からの正式なコメントもなく、疑惑の真偽については曖昧なままですが、「視聴者が“気になる”と感じた」こと自体が、CMの演出がそれだけ印象深いものであったことの証明でもあるのかもしれません。
実際にCMを検証!映像と音の演出をチェック
話題となったCMの一例として、ハロウィンをテーマにしたポッキーのCMが挙げられます。
このCMは、季節感を活かしたビジュアルや賑やかな音楽、テンポの速い編集が特徴で、全体として楽しくポップな印象を与える構成となっています。
特に映像の切り替えが早く、画面の色味が一瞬で変化したり、キャラクターの動きがリズミカルに演出されていたため、視聴者によっては「今、何か映った?」と感じるような“気になる瞬間”があったようです。
加えて、背景に一瞬だけ登場するアイテムやシンボル的な要素も「何かメッセージが込められているのでは?」と話題になり、SNSでの考察の材料となっていました。
しかしながら、これらの演出が実際に“サブリミナル効果”を狙って作られたと示す明確な証拠はなく、あくまで制作側のクリエイティブな演出である可能性が高いとされています。
映像の受け取り方は個人差が大きく、見るタイミングやその人の注意の向き方によって感じ方も変わってきます。
結果として、「何かを感じた」と思った視聴者がいるのは自然なことですが、それがサブリミナル的な意図によるものと断定するのは難しく、あくまで主観的な印象によるものだと考えられます。
このように、演出の一部が話題となるのは、広告の構成やアイデアが視聴者の記憶にしっかり残っている証拠とも言えるでしょう。
サブリミナル効果とは?仕組みをやさしく解説
サブリミナル効果とは、「意識されない情報が、無意識に影響を与えるのではないか」という仮説に基づいた心理現象です。
たとえば、映像の中に一瞬だけ表示される文字や、音楽に紛れて流れるささやき声など、視聴者が気づかないレベルで提示された情報が、その後の行動や感情に影響を及ぼす可能性があるとされています。
このような現象は1950年代から注目され始め、映画館で「ポップコーンを買おう」といったメッセージを一瞬だけ映す実験が話題となり、一般にも知られるようになりました。
しかし、実験や学術的な研究も数多く行われてきたにもかかわらず、明確に効果を立証した事例は少なく、現在も研究者の間ではその有効性について意見が分かれています(出典:American Psychological Association)。
一部の研究では、「特定の条件下でごくわずかな効果が見られた」とされていますが、その多くは再現性に乏しく、長期的または広範囲な影響を示すものではないため、多くの専門家はその実用性や倫理性に対して慎重な立場を取っています。
広告におけるサブリミナル演出の有無についても、完全に否定されているわけではありませんが、「限定的な条件でわずかな効果があったとされる研究」に留まっており、現時点では科学的に信頼できる技術としては確立されていないのが実情です。
そのため、一般の消費者としては、必要以上に不安を感じることなく、「自分がどう受け取るか」に意識を向けることが大切です。
なぜ禁止された?サブリミナルがNGな理由
サブリミナル的な演出が問題視される一番の理由は、視聴者がその意図に気づかないまま、無意識のうちに影響を受ける可能性があるという点にあります。
つまり、本人の意志とは無関係に心理的な誘導がなされることで、自由な判断が妨げられる恐れがあり、これは倫理的な懸念として強く指摘されています。
こうした背景から、日本では放送倫理・番組向上機構(BPO)がガイドラインを設けており、テレビ番組や公共広告においてはサブリミナル的な演出が原則禁止とされています。
たとえば、映像内に1フレームだけメッセージを挿入したり、音声に紛れて聞き取れない指示を加えるなどの手法は、視聴者の“気づかないうちに”何らかの影響を与えるおそれがあるため、BPOの放送基準に抵触する可能性があります(出典:BPO「放送基準」)。
このような規制は日本だけでなく、アメリカやイギリスなど多くの国でも導入されており、たとえばアメリカでは連邦通信委員会(FCC)が類似の方針を持っています。
いずれの国でも共通しているのは、「視聴者の信頼を損なわないこと」「放送の公正性・透明性を守ること」が目的であるという点です。
サブリミナルが疑念を抱かれるような演出として扱われるのは、放送や広告における“正直さ”や“誠実さ”が、現代のメディア環境では一層重視されている証でもあります。
脳とサブリミナルの関係を探る
私たちの脳は、意識に上らない情報も処理しているとされます。たとえば、周囲の雑音の中から自分の名前だけを聞き分けたり、一度しか見ていない映像の一部が記憶に残っていたりすることがあります。これらは「潜在意識」の働きによるもので、無意識下でも脳が外部からの刺激を処理している証拠とも言われています。
この脳の特性を活かす形で生まれたのがサブリミナル演出ですが、現時点ではその効果について明確に「ある」と断言できるだけの科学的根拠は揃っていません。実際、多くの研究において効果の存在を示唆する結果もあれば、そうでないものもあり、学術的な合意はまだ形成されていないのが現状です。
たとえば、ある実験ではごく短時間(一瞬)だけ表示された単語が、その後の被験者の行動や意思決定にわずかに影響を及ぼしたという結果もあります。しかし、こうした影響は非常に短期的かつ軽微なものであり、長期的な記憶形成や継続的な行動変容にまでは至らないという指摘もあります。
また、サブリミナル刺激がどのように脳内で処理されるのかについては、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)などを用いた研究が進められていますが、処理のプロセスや関連する脳領域についてもまだ解明されていない点が多く残されています。
そのため、私たちが「なんとなく気になる」「印象に残った」と感じる場面があったとしても、それが本当にサブリミナルによる効果なのか、それとも他の心理的要因(期待、驚き、既視感など)によるものなのかを見極めるには、今後さらに多くの研究が必要とされています。
まとめ|“無意識”を意識して、冷静な視点を
本記事では、ポッキーCMにまつわるサブリミナル効果のウワサや、視聴者の間で語られた印象、さらには心理学や脳科学などの科学的視点からの見解について、幅広く紹介してきました。
現時点で、サブリミナル演出が視聴者の行動や意思決定に大きな影響を与えるという明確な証拠は乏しく、学術的にもその効果は限定的かつ再現性に乏しいとされています。したがって、こうした演出が広告やメディアで意図的に使われた場合でも、その影響は極めて一時的かつ限定的である可能性が高いと考えられています。
ただし、CMや映像コンテンツを見たときに「なんとなく気になる」「妙に印象に残る」と感じることは自然な反応であり、それがサブリミナル効果かどうかにかかわらず、私たちの感覚や受け止め方が多様であることの表れでもあります。
だからこそ、CMを見る際には、「自分がどう感じたか」を大切にしながらも、その感覚に振り回されすぎず、冷静に情報を受け止める力=メディアリテラシーを意識しておくことが大切です。
不安や疑問を感じたときには、「なぜそう思ったのか?」「どんな演出がその印象を与えたのか?」と一歩引いて考えることで、メディアの中にある意図や技術をより客観的にとらえることができるようになります。
感覚を否定するのではなく、それを手がかりにしながら、情報に対してバランスの取れた視点を持つこと。それが、現代の情報社会をより健全に生き抜くために欠かせない姿勢なのかもしれません。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の主張や科学的断定を意図するものではありません。